サルコペニアとフレイル、老嚥ってどう違うの?

サルコペニアとフレイル、老嚥の違いは?

サルコペニアとは

サルコペニアは1989年にRosenbergによって

「加齢による筋肉量減少」

と提唱されました。

その後、2010年にEWGSOP(European Working Group on Sarcopenia in Older People)より

「サルコペニアは進行性、全身性に認める筋肉量減少と筋力減少であり、身体機能障害、QOL(生活の質)低下、死のリスクを 伴う」

との定義が発表されました。

ここでのサルコペニアは

原発性サルコペニア:加齢が原因であるもの

二次性サルコペニア:活動・栄養・ 疾患に関連して生じるもの

に分けられています。

サルコペニアを定義する3つのキーワードは「筋肉量」「筋力」「機能」であると言えます。

サルコペニアの危険因子として加齢、廃用性筋委縮、不活動、飢餓、エネルギー摂取不足、侵襲、悪液質、神経筋疾患が挙げられます。

フレイルとは

フレイルは身体機能障害に陥りやすい身体的予備力の低下している状態です。フレイルの高齢者は転倒や入院 、ADL低下、死亡等のリスクが高いと言われています。

フレイルの高齢者はADLが自立し身体機能もある程度維持されている為、障害(disability)の前段階にあると言われています。

老嚥とは

高齢者は摂食嚥下機能が低下することが良く知られており 、老人性の嚥下機能低下は老嚥(Presbyphagia)と呼ばれています。

老嚥の状態は摂食嚥下障害とは異なり、嚥下食等の特別な食事の調整は必要なく、障害のある状態ではない。

老嚥の原因には嚥下関連筋群のサルコペニア以外に感覚の味覚・嗅覚の変化や口腔乾燥、反射機能の低下等が挙げられています。

老嚥の状態は予備的能力に乏しく摂食嚥下障害に陥りやすいと考えられており摂食嚥下機能におけるフレイルの状態といえます。また、口腔内の筋力低下のことをオーラルフレイルと呼び、超高齢化社会における口腔機能低下に対するアプローチ運動の概念が提唱されました。

サルコペニアの摂食嚥下障害の診断

2013年に第19回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会のシンポジウム「サルコペニアと摂食嚥下リハ」で、サルコペニアの摂食嚥下障害の定義と診断基準案が提示されました。

ここではサルコペニアの摂食嚥下障害定義を「加齢以外の原因も含めた全身及び嚥下関連筋群の筋肉量減少、筋力減少による摂食嚥下障害」としました。

また、診断基準案として全身のサルコペニアの存在と嚥下関連筋群の筋肉量減少、嚥下関連筋群の筋力減少、摂食嚥下障害の原因疾患の存在を判定する方法が示されました。

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サルコペニアの摂食嚥下障害より引用)
この診断法ではサルコペニアの摂食・嚥下障害を

 

Definite diagnosis: 確定診断

Probable diagnosis:可能性が高い

Possible diagnosis:可能性あり

の3つに分けて診断する方法がとられていますが、評価法の信頼性と妥当性は検証されてはいません。

このフローチャートでは 、対象者をサルコペニアの摂食嚥下障害の可能性が高い群、可能性あり群、及び除外群の3群に分ける。

①全身のサルコペニアの有無で分類し、あり群を更に摂食嚥下障害有無で分類。

②摂食嚥下障害のある群で明らかに摂食嚥下障害を引き起こす診断のある者は除外。

③嚥下関連筋群の筋力低下がある者を可能性が高い群とし、低下が無い者を可能性あり群。

このフローチャートでは嚥下関連筋群の筋力は最大舌圧として測定している。しかし、嚥下関連筋群の筋肉量は測定は行なっていません(簡易的に測定できる手段がありません)。

おわりに

サルコペニアによる摂食嚥下障害は、高齢化社会が進む世の中で、今後更に注目を浴びてくるジャンルです。

現時点では研究のデータが少ないですが今後多くの研究が行われていくことに期待しましょう。

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