最近テレビなどのメディアでよく耳にする「誤嚥性肺炎」について解説します。
誤嚥性肺炎とは?
水や食物、唾液、胃液、腔内の細菌が本来であれば食道へ入るところを、誤って気管に吸い込むことを誤嚥(ごえん)と言います。この誤嚥が原因となり肺炎を発症することを誤嚥性肺炎と言います。
高齢者は、色々な病気を合併することで誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。誤嚥性肺炎の原因となっている病気の治療が難しいことが多く、誤嚥性肺炎は繰り返し発症する高齢者が後を絶ちません。ついには亡くなってしまう方も少なくありません。
70歳以上の肺炎では誤嚥性肺炎が80%を占めると言われています。毎日2万人の70歳以上の高齢者が誤嚥性肺炎により入院しています。
現在、現在誤嚥性肺炎は日本人の死因の7位となっています。
【日本人の死因7位】誤嚥性肺炎
どうして起きるの?
誤嚥が原因による肺炎なので、飲み込み(嚥下)の機能が低下してしまい発症します。
特に高齢者や神経疾患、認知症により寝たきりの方は、口腔内で肺炎の原因となる細菌が増殖してしまいます。高齢者や寝たきりの方は身体機能や飲み込む力が低下し、さらに誤嚥の防御機構であるむせる力(咳反射)も弱くなります。その結果、口腔内の細菌が気管から肺へと入り、肺炎を発症します。
そのため、栄養状態が悪く、免疫機能の低下も誤嚥性肺炎の発症に関与してきます。
誤嚥性肺炎は、どのような症状?
誤嚥性肺炎では下記の症状が見られます。
- 元気がなく、ぼーっとしていることが多くなった
- 痰がよく絡む
- 食欲がない
- 食事時間が長くなる(口の中に食べ物を溜め込む)
- 食事中によくむせる
- 体重が徐々に減少してくる
- 微熱が続く
病院受診では、胸部エックス線写真で肺炎の影を確認することで診断されます。
採血を行い、白血球の増加や炎症値が高くなることも重要な所見です。
誤嚥性肺炎の種類
誤嚥性肺炎のを発症するには大きく3つのタイプに分類されます。
①食事の際にむせて、気管に誤嚥物が入る
②口から喉にかけて細菌が発生し、細菌を含んだ唾液を無意識のうちに誤嚥する
③夜間など睡眠中に口腔内の唾液や胃、食道からの逆流物を誤嚥する
誤嚥性肺炎になってしまったら、、、
高齢者で発症する大半の方は病院へ緊急搬送されます。その後、呼吸状態や全身状態が不良な場合は入院して集中的な治療を行います。治療は、抗菌薬(クリンダマイシン、メロペネム、アンピシリン・スルバクタム、モキシフロキサシン)を用いた薬物療法が基本です。
治療に加え、口腔ケアの徹底や嚥下指導も行い再発防止に努めます。
また、嚥下機能に悪影響を及ぼす副作用のある薬物を内服していないか確認を行います。
その上で、嚥下機能を改善する効果が確認されている薬(ACE阻害薬)などの適応を検討することがあります。
誤嚥性肺炎は危険
前述した通り、誤嚥性肺炎は栄養状態が悪く、免疫機能の低下なども発症に関与してきます。
嚥下関連筋力が低下→誤嚥性肺炎を発症→食事を経口摂取ができず栄養状態の低下→栄養失調により、身体の免疫力低下→さらに誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。
この負のサイクルから抜け出さず、誤嚥性肺炎を繰り返し発症する高齢者が地域には多くいます。
誤嚥性肺炎を繰り返すことで症状が重症化していき、最終的に亡くなる方も少なくありません。
どうやって予防するの?
1 :口腔を清潔に保つ
口腔内の細菌を肺に運び入れないことが重要‼️
歯磨きの徹底
舌のクリーニング
うがい
義歯の手入れ
虫歯や歯周病の治療をして口の中の細菌を繁殖させない
2 :胃液の逆流を防ぐ
食事終了2時間は横にならず座って過ごす 就寝時に頭位を高く保つ(30度)
3 :嚥下体操を行うなど嚥下機能を改善する
舌を動かす体操
首を動かす体操
歌を歌うなど発声訓練
歯茎のマッサージ
4 :食事をする時の姿勢
食事の際は前かがみの姿勢をとりましょう
5 :食事内容の配慮
嚥下機能のどこに問題が生じているのか明らかにし、食事の形に配慮していきます。
〜例えば〜
咀嚼に問題がある場合は、食事を小さく刻む、軟らかく煮る、押しつぶす
水でむせる場合は、お茶やスープにもとろみをつけるなど
さいごに
誤嚥性肺炎は繰り返しやすく、さらに重症化するの食事中のむせが気になりだした段階でしっかりと予防していく必要があります。
楽しい老後のためにも予防を怠らないように心がけましょう‼️