最近は、舌圧測定器を使用した口腔器官のリハビリテーションが行われています。
日本ではJMSさんが舌圧測定器を販売され、各医療機関にて使用されています。また歯科分野の診療報酬に舌圧の測定が加わるようになりました。
皆さんは舌圧測定器をリハビリテーションにどのように活用されていますか?
舌圧測定の数値が改善することで嚥下機能や発話明瞭度の改善に関連することは多く紹介されています。しかし、実際にどのようにリハビリテーションに用いる方法を紹介している論文は数少ないです。
ここでは嚥下リハに関連した講習会等でよく用いられている舌圧測定器を使用したリハビリテーションの論文「The Effects of Lingual Exercise in Stroke Patients With Dysphagia」を紹介したいと思います。
https://www.archives-pmr.org/article/S0003-9993(06)01457-2/pdf
舌圧トレーニング効果の検証内容
対象
・脳卒中患者10名(男:女 5人:5人)
・平均年齢69.7歳
・脳卒中発症から1〜48ヶ月
実施期間
8週間
訓練の実施頻度
3日/週
実施方法
舌圧測定器を使用した等尺性舌筋力増強訓練です
・舌の前方(舌尖10mm後方)に目標設定した舌圧の数値の力を加える×10回
・後の後方(有郭乳頭前方10mm)に目標設定した舌圧の数値の力を加える×10回
この2つを1回のリハビリ中に3セット行います。
また高齢者の脳卒中患者は口腔内の感覚低下により舌の後方の運動ができず前舌のトレーニングのみ行っています。
目標値の設定方法
①舌圧測定器を使用したリハビリを開始するときの前舌と後舌の各最大舌圧を測定する。
②最初の1週間はリハビリ開始時に測定した最大舌圧(①で測定した数値)の60%の数値、2週目は80%に設定する。
③残り6週間は2週毎に週末に最大舌圧を再測定し、その最大値の80%の目標値と定めています。
結果
8週間上記の等尺性舌筋力増強訓練を実施した結果、下記の点に改善が見られています。
・前舌および後舌の両方で有意な最大舌圧の数値の増加がありました。
・Penetration-Aspiration Scale(from Rosenbek ,et al 1996)のスコアが大幅に改善した。これは誤嚥の頻度の減少を示しています。
https://st-dict.com/penetration-aspiration-scale/
・嚥下障害患者の QOLを評価する質問紙であるSWAL-QOLにても大きな改善を認めています。
モデル式
これまで今回の紹介させてもらった論文をまとめさせてもらいましたが実施に自分自身が実施するとなるとどうのように進めていくのかが少しわかりにくいと思いましたので計算等のモデル式を用意させていただきました。
舌圧測定器を使用したリハビリテーションの開始する際に最大舌圧を測定します(前舌・後舌両方測定します)。最大値が20.0kPaだったとします。
※最大舌圧測定方法が上記に記載していますのでご参照ください
最初の1週間は開始時最大舌圧の60%の数値を目標にするので
20.0kPa×0.6=12.0kPa
12.0kPaを目標に10回実施します。
2週目は開始時最大舌圧の80%が目標となるので
20.0kPa×0.8=16.0kPa の計算式になります。
そして2週目の終わりに最大舌圧測定の実施します。
その数値が28.0kPaとします。
その後の2週間は前の週終わりの最大値の80%が目標となるので
28.0kPa×0.8=22.4kPa となります。
それ以降は2週間毎に、週の最後のリハビリの際に最大舌圧測定を行い80%を目標値と定めます。
これの繰り返しです。
※注意点ですが、前舌と後舌の両方で等尺性舌筋力増強訓練を実施します。前舌と後舌にて目標設定数値はもちろん異なってきます。
おわりに
今回、「The Effects of Lingual Exercise in Stroke Patients With Dysphagia」の論文を簡単に要約させていただきました。内容に不十分なことも多々あると思います。気になる方は論文を実際に読んでみてください。