皆さんは、各協会の賠償責任保険制度についてご存知ですか?
各協会(日本理学療法士協会・日本作業療法士協会・日本言語聴覚士協会)ではリハビリの業務に関わる不測の事故に備え、協会正会員を対象とする賠償責任保険制度があります 。
「賠償責任保険制度」とは
賠償責任保険制度は、リハビリの療法士個人として業務上の過失により損害賠償請求を受け、 法律上の損害賠償責任を負担する場合にその損害を補償する保険制度です。(保険期間中に事故が発見された場合のみ保険の対象となります。害を補償する保険制度です。)
今や病院だけではなく、医療に携わった方の個人責任も追及される時代です。会員の皆さまが安心して各リハビリ業務に従事できるよう万一の備えとしてご検討ください。
「賠償責任保険制度」は、会費を納入された会員全員が加入する
①「基本プラン」(保険料は協会負担)
②会員が任意で加入する「上乗せ補償プラン」(保険料は会員自己負担)
の2つのプランで構成されている保険制度です。
基本プラン
会員全員が加入する最低限の補償です。
保険料は各協会が負担しますので、会員の方の自己負担はありません。
さらに、加入手続きも不要です。
「基本プラン」は、期日までに会費を納入された会員を対象とします(休会者は含みません)。
上乗せ補償プラン
「基本プラン」の補償に上乗せする、会員が任意で加入するプランです。
業務中における賠償事故の補償額が上乗せされると同時に、日常生活における賠償事故等の補償(PT・OTのみ)も対象となり、補償範囲が広くなります。
保険料は、会員個人の負担となります。
加入手続きも各個人で行う必要があります。
年間保険料について(2019年度)
基本プランは各協会の年会費を納めていれば、別途で支払う必要性はありません。ここでは「上乗せ補償プラン」の年間保険料について説明します。
・理学療法士賠償責任保険:3,500円
・作業療法士総合補償保険制度:2,840円
・日本言語聴覚士協会賠償責任保険制度:1,600円
保険期間・申し込み時期
「基本プラン」は協会年会費を
各保険によって保険期間・申し込み時期が異なるので確認しておきましょう。
理学療法士賠償責任保険
保険期間:2019年4月1日午後4時~ 2020年4月1日午後4時(1年間)
申し込み期間:2019年3月15日(金)
作業療法士総合補償保険制度
保険期間:2019年7月1日(午後4時)から2020年7月1日(午後4時)までの1年間
申し込み期間:2019年6月14日(金)まで
日本言語聴覚士協会賠償責任保険制度
保険期間:2019年4月1日午後4時から2020年4月1日午後4時
申し込み期間:2019年3月15日(金)まで
気づいたら申し込み期間が過ぎているなんてことはよくあることです。
申し込み期間以降は中途加入の取扱となります。保険対象期間が短くなるので保険料金も変わってきますが、支払っていない期間に関しては保険対象期間にならないので気をつけましょう。
補償内容
事故を起こしてしまった際の、対象となる補償内容は下記になります。
対人賠償
(例)リハビリを実施中、患者がバランスを崩して転倒 し、頭を強く打って死亡した。作業療法士の指導内容ミスを問われ、賠償請求された。
対物賠償
(例)患者から預かった眼鏡を誤って落として壊してしまい、 弁償することになった。
人格権侵害
(例)患者の個人情報をうっかり第三者に漏らしてしまい、患者 からプライバシーの侵害で訴えられた。
初期対応費用
(例)リハビリ終了後に患者さんをベッドに移乗させようとしたところ、患者さんを誤 って骨折させてしまった。取り急ぎ責任者とお詫びに行くとともに見舞金を支払った。
被害者対応費用(見舞金 / 見舞品)
(例)リハビリ業務に起因する事故により、患者が死亡してしまった。結果的にセラピストに賠償責任は発生しなかったが、遺族に対してお見舞金を支払った。
対人 / 対物賠償 (日常生活中)
(例)休日にデパートで買い物中に誤って、陳列棚から商品を 落として壊してしまった。
補償対象
各協会により、補償内容の対象や補償の上限額が異なりますので確認しておきましょう。
加入する必要はあるの?
各協会加入することで受けれる「基本プラン」での補償額はほんの僅かです。訴訟になりセラピスト個人に損害賠償を求められた場合は自己負担額が多額になります。
各医療機関で、医師賠償責任保険に加入している場合があります。しかし、医師賠償責任保険では被保険者となっているのは開設者のみとなっています。各セラピスト個人については被保険者とはなっていません。
従来、病院内における医療事故については、病院や医師が賠償責任を負うことが一般的でした。しかし近年では、病院や医師だけではなく、看護師やセラピスト個人の過失が認められ、個人に対して損害賠償請求されるケースが増えてきています。
また、病院がひとまず患者サイドへ賠償金を支払った後にセラピストに対して、賠償額の一部負担を求める可能 性もあります。このような場合にもセラピスト個人の責任が認められる場合には、本保険制度の補償対象となります。
賠償額が数百〜数千万そんな額を皆さんは払えますか?
自分の身を守るためにも賠償責任保険の「上乗せプラン」には必ず加入しておくことにしましょう。
リハビリの訴訟例
医療訴訟は年間で約1000件前後と言われています。その中でもリハビリ職が対象にされるなんてこともありえない話ではありません。
特に、患者と直接関わるリハビリ業務による事故を起こせば院内アクシデントのみではなく、訴訟に至るケースも過去には存在しています。
原告が原動機付自転車の転倒事故により右上腕骨 骨折の傷害を負い,被告病院において整復固定術及 びリハビリテーションを受け、その後,他病院に転 医して髄内釘固定術及びリハビリテーションを受けたものの,右肩関節の拘縮が改善せず可動域制限が 残存したのは,被告病院の担当医師が骨折部位の回 復の程度を厳重に経過観察し,回復の程度に応じてリハビリを適切に実施すべき注意義務等を怠ったためであると主張して,被告に対し,損害賠償金2024万5364 円及び遅延損害金の支払いを求めた事案。医療機関側の責任が認められ,ピンによる固定に対する処置における注意義務違反の有無については,「本件においては,リハビリを円滑に実施して関節の拘縮を改善し,かつ,偽関節の発生を防止するために,ピンを入れ直すなどの,ピンによる刺激痛を抜本的に除去するとともに固定力を高める処置を採る必要があったものと認めることができる。し かし,前示のとおり,A 医師は,原告の訴えていたピンによる刺激痛に対しては,鎮痛剤の投与による対症療法に終始し,ピンを入れ直すなどの処置を採る必要性の程度等について何ら検討していなかったものであり,A 医師には,ピンによる固定に対する処置に関し,注意義務違反があった。」,抜釘前のリハビリにおける注意義務違反の有無については,「A 医師は,抜釘前のリハビリに関し,その実施方法等について原告に対し十分な指導を行うとともに,その実施状況を慎重に経過観察すべき前記の注意義務を怠ったものと認めることができる。」などと判断された。本件では,医師のリハビリの実施方法についての指示が不十分と判断されたが,場合によっては「理 学療法士がリハビリの際に医師の指示に従わなかっ た。」「理学療法士が,リハビリ中の患者の症状等に ついて,医師に適切な報告をなさなかった。」などと,理学療法士に矛先が向けられる可能性もある。 (PT にとって必要な法律知識)より引用
こんな人にオススメ
患者と直接関わるセラピストは賠償責任保険制度に加入しておくべきだと思います。
なかでも、加入が必須と言われるのが急性期病院で勤務されているセラピストと在宅で関わっているセラピストです。
急性期病院:患者そのものの状態が悪いため、リスク管理が重要になってくる。
訪問リハビリなど在宅勤務:患者様に急変等があった際に早急に処置が行えないケースが多い。また責任がセラピストに1人に求められることもあるため。
終わりに
保険と言われると生命保険や車両保険など色々とありますよね。この賠償保険制度のは年会費が数千円なので他の保険に比べると断然に格安です。
保険の手続きが面倒だから、、
気づきたら期限が過ぎていた、、、
と言ったことを理由に加入しない方が多いですが、必ず加入しておいた方がいいです。当たり前のことですが「自分の身は自分で守りましょう!!」
各保険毎に、補償内容や保険料、保険期間等々異なってきます。自身で下記の各ホームページで内容を確認し加入をしていただきたいと思います。